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留置所黙示録

2014年3月末日児童ポルノ買春及び児童ポルノ法違反で家宅捜索されました。書類送検されたあと8月某日に傷害で逮捕されました。トップ絵はクジラックス先生からもらいました。※なお当ブログは犯罪の抑止のためのブログです※

年末ラジオのお知らせ

さて久しぶりですが

世界ランク速報

(グロ画像とか障害者の悪口ばかり書いている徳の低いサイト)の管理人とまたラジオをすることにしました。

知っている方はいるか分かりませんが実は去年も一昨年もしていました。

話す内容は

児童ポルノ

・ブログ凍結について

・今年の事件でお互いが興味を持ったもの

・ハセカラ

です。今日暇だよという人はぜひ来てください。

一応時間としては12月30日の21時開始となります。詳細はまたこちらのブログでも告知します。

 

ラジオURL

http://std1.ladio.net:8060/nadazero60558

 

感想掲示板

jbbs.shitaraba.net

人はなぜ捕まるのか

今回の話は人は何故捕まるかだ。

まあ悪いことをしたら捕まるというのは当たり前だが捕まるには必ずしも何かしら理由がある。それでこの理由というのは文字通り人それぞれ違う。留置所に入っている間に同じ房の人から聞いたもの、少し面識のあった人などから聞いたものでも、オレオレ詐欺、違法ドラッグ、窃盗、傷害、恐喝、食い逃げとヴァラエティに富んだものだった。

かつて今は解散したSMAPという国民的アイドル集団が世界に一つだけの花というのをリリースしたとき歌詞の中で「みんな違ってみんな良い~」みたいな歌を歌っていたけど留置所に入る人にも同じことが当てはまる気がする。ただNo.1を目指してしまったらそれこそ何年も外の世界に帰って来れなくなるから何事も程々が良いと思う。

その中でいくつか聞いた物の中で覚えている犯罪を書いていきたい。

ケース1

オレオレ詐欺

僕が留置所に突っ込まれた時から隣に2人組の男が入っていた。この2人はとても仲がよくわざと一緒に捕まったんじゃないかと思うくらいよく雑談をしていた。その1人がどうやらオレオレ詐欺で捕まったと聞いた。もう1人も何かの罪で捕まっていたが忘れてしまった。

誰を騙したのか聞いていないが昼間留置所で暇しているとき、隣で2人組がじゃれあっている声が聞こえてきた「お前またそうやってお婆ちゃん騙すんだろ」どうやらお婆ちゃんを騙していたらしい。ちなみにこのやり取りは2人のあいだでの鉄板(固い、すべらないの意味)のネタらしくたまにこの声が聞こえてきた。

ある朝、留置所では20分ほどの運動時間がある。その中でひげそりをしたり爪切りをできるが皆特に何かするわけでなく漫然とストレッチをしたりしていた。基本的に留置所にいる警官は留置課にいるので刑務官とは違う。そのためフレンドリーな人が多くこちらが問題を起こさなければ割と物腰は柔らかかったのを覚えている。

その内の1人の警官が「そういえばお前何でお婆ちゃんばかり騙したんだ?」と2人組の男に聞いた。するとこう答えた。

「いやー別にお婆ちゃんばかりじゃないんですよ。お爺ちゃんとかもいたんですけど基本的にお爺ちゃんは何かあると周りに確認するんですよね。でもお婆ちゃんだと周りに確認しないで振り込んでくれたんです。だからお婆ちゃんばかりになったんですよ」

どうやらお婆ちゃんの方が何かあるとすぐに金を出してくれるらしい。これから先困ったらお婆ちゃんでも騙そうかなと思ってしまった。

ケース2

違法ドラッグ

留置所に入った時初めて聞こえた声があった「葉っぱカッター!葉っぱカッター!」

そうポケモンの技である。この時は薬でもしているのかなと思っていたが後で聞いたところ違法ドラッグで捕まったそうなのであながち間違ってはいなかった。このお兄ちゃんは見た目もまだ若く20代半ばそうだった。仕事は何をしているのかと聞いたら「ペンキ屋で内装していて一人親方です」と言っていた。このペンキ屋の兄ちゃんは違法ドラッグをよく使っていたそうでそのまま運転をしていたら事故(物損のみ)を起こし丁度、違法ドラッグが問題視されていた時期だから捕まったそうだ。同房にいたT森さんに「でも彼何で違法ドラッグして運転したんでしょうねえ」と聞いたところ「俺はよお別に違法ドラッグをしたことはねえんだけど」と前置きをした上でこう語ってくれた。

どうやら違法ドラッグをすると視覚や感覚が敏感になる。その状態でドライブをすると高速で光の塊が見えるようになるからハイ状態になれるそうだ。文字通りランナーズハイならぬドライバーズハイである。ただ当然のことながら感覚が敏感にはなるが酔ったような気分にもなるため事故率が半端ない。たまに違法ドラッグを決めて捕まる人もいるが理由は概ね上記のものらしい。

ただこのペンキ屋の兄ちゃんは人当たりもよく僕が検察に行く時も「グランドライン一緒に行きましょうね!」とエールを送っていた。ちなみにグランドラインは何のことなのかと聞いたら、東京拘置所のことだった。確かに大いなる場所ではある。日頃からめちゃくちゃ明るかったため警官に「お前まだ本当は薬持ってるんじゃないか」と軽口を叩かれていた。だから僕は「何でそんなに明るいんですか?」と聞いてみた。こんなところいてよく明るく振る舞えますねと。

するとこのペンキ屋の兄ちゃんはこう言った「空元気に決まってるじゃないですか。寂しいに決まってますよ」このペンキ屋の兄ちゃんだけ独房であったためたまに見かけるときは一人で横になっているのを見かけた。恐らく根はいい人なんだろう。聞いたあとこうも言われた「だから18番さんも一緒にグランドラインに行きましょう!みんなで行けば寂しくないですよ」

幸いなことに僕だけグランドラインに行くことはなかった。ただ2年も経った今でもあの時本音をぽろっと語ってくれた彼のことをたまに思い出す。

ケース3

窃盗

同房にいたT森さんである。T森さんはシャブの密売、SMクラブの経営などしていたことが有り豊富な経歴を持っていたが、近年は金に困ることになりよくゲーセンの置き引きをしていたそうだ。

ただ今までほとんど捕まったことがなく(話を聞くとだいぶヤクザまがいではあった)が本格的に捕まったのは今回が2回目だったそうだ。2回目というのは何故かというと1度捕まったことがあるそうなのだが、取り調べを受けているとき気胸が破裂したらしく緊急入院をしたそうだ。それで入院の際でも取り調べが続くため刑事が「治ればまた取り調べをするからな」と言われていてその時自暴自棄になって自分で治療中の管を抜いて脱走をしたそうだ。「それでその時大丈夫だったんですか?」と聞いたら「ん、何か肺が片方ヘコんで今でも触ればへこんでるのわかるけど何か命に別状はなかったみたいだ」と言われ人の生命の強さを知った。

ちなみに女検事に取り調べされているときこの脱走した件も聞かれ理由を話したところ「そうなんですか」としか言われなかったそうだ。ただT森さんは複数のゲームセンターで置き引きをしていたことと取り調べがお盆なのもあって判決が長引きかれこれ2ヶ月近く留置所にいるそうだ。そのため中にどんな罪で捕まった人がいるのか色々聞くことができた。

ケース4

集団恐喝

僕と同じ時期に一緒に留置所に入った人がいた。同じ時期に入ったからか僕の番号は18番で彼は19番であった。一緒に身柄送検をされた時に何で捕まったの?と聞いたら「恐喝です」と不敵な笑みを浮かべていたのでやはり留置所はワルしかいねえなと内心恐れおののいたものである。

だが、話をすると見た目は少し怖かったが人あたりが良かったのでせっかくだから「何で恐喝したの?」と聞いてみた。するとどうやら彼の会社が取引先のある顧客の弱みを握ったらしく、その顧客を恐喝することにしたんですと彼は語った。会社ぐるみで恐喝とかすごい会社もあるなと違った意味で感心していたら、その場に彼も社長らと同じ部屋にいたため集団恐喝で捕まったんですと説明を受けた。

「その時殴ったり蹴ったりしたの?」と聞いたら「いえ、本当にその場にいただけです」と19番は言った。じゃあ何で捕まったのかと聞きなおすとこの手の集団での犯罪は全員の口裏が取れないといけないため全員逮捕をする必要があるそうだ。だから集団での暴行、強姦、恐喝のたぐいはとりあえずその場にいるだけでも捕まる可能性が高いためそういった集団と仲良くしないほうがいいだろう。ただ19番の彼の会社が弁護士を雇ったらしく会社が捕まったことは不問にするらしくてそこは羨ましかった。

ちなみにその彼に「留置所から出たら何をしたい?」と聞いたところ「普通に仕事がしたいですね」と言っていてかなり真面目なことが分かった。だから

「じゃあ今回捕まったのは迷惑だった?」と聞いてみたら「本当に大迷惑です」と苦笑いをしていたのを覚えている。逮捕されたことは墓場まで持っていきますよと言っており、こういう風に巻き込まれても逮捕されるんだなと何となく人生の理不尽さとやらを味わった。

ほかにはT森さんから聞いた話では嫁をDVしたがどうやら嫁側がはめたせいで苦労した人の話や

 

もらい泣き (集英社文庫)

もらい泣き (集英社文庫)

 

(画像に他意はないです) 

ITのプロジェクトリーダーだったが深夜ランニングをしていたら何となく他人の家のドアを開けてみたところ、鍵が空いていないから入ったところ中の人に気づかれて通報して捕まってしまい建造物侵入罪で捕まったそうだが、中の人が女性であったため強姦目的もしくは窃盗目的で侵入したのではないかと20日間いっぱい拘留された人もいたそうだ。ただこちらの人はリーダーをしていたため会社側も解雇にしないとのことであった。

捕まって送検を終えて面会を終えたあとようやく不安が湧いてきた。会社はこのままクビになるのかということである。そのことをT森さんに聞くと「半々だな」と返事が来た。

理由を聞くと上記のように特別なポジションの人ならば会社は考慮するし、また19番の彼のように会社関係の罪ならば会社はクビにしないとのことであった。「だけどよ俺は今土方してるけど、最近の土方は1日でも無断欠勤するとクビだぜ。」

そう言われると確かに会社がクビにしない理由がなかった気がした。しかも会社都合ではなく逮捕が原因でクビになると次の働き先をどうしたら良いのかとようやく事の重大さに気づいてきた。そんな僕を見てか消灯している留置所の天井を見ながらT森さんがぼそっとつぶやいた。

「ちょっと人を殴っただけ、ちょっと人の物を盗んだだけ本人は軽い気持ちでしでかしたかもしれない。でもよこれだけで人生だいぶ悪い方向に転がっていくもんだぜ」

そう言うとT森さんは布団に寝っ転がって無言になった。T森さんは不眠気味だろうから寝ていないことはよくわかるただもう今日は話したくないのだろうなというのがよく分かったため僕も黙ることにした。無言になってこのまま人生がダメになったらどうしようとあくまでも自分のことだけを考えていた。

この時点で6日目を過ぎていたと思う。

 

留置所と読書

      人間失格

 

以前の記事でも先述したとおり留置所にいる間は暇だ。取り調べがあればまだ人と話したりする機会があるが、2日目の地検と3日目の地裁が終わったあと基本的に僕はすることがなかった。そのため留置所生活のほとんどを本を読んで過ごすことになり、今思い出しても読んだ本のタイトルが出てくるくらいだ。

それで以下は留置所で読んだ本。その時に思った感想などを簡単に紹介していきたい。

 

嗤う伊右衛門 (角川文庫)

嗤う伊右衛門 (角川文庫)

 

 初めて京極夏彦を読んだ。京極夏彦といえばとにかく作品が分厚い。毎回この本で人が殴り殺せるんじゃないかと思うくらい分厚いことと文体が妙にナルシスティックで今のラノベの元祖と言っていい独特の文体もあり敬遠していた。だが、この時ばかりは京極夏彦の分厚さがありがたかった。何故か留置所では1日に持ち込める本が3冊しかないのである。3冊のうちの1冊と考えればこれほど頼りになる分厚さはない。事実丸一日かけて読んでも未だ読破できず、読むのに2日ほどかかったからだ。ストーリー自体は江戸時代のホラー小説といった内容で分厚い割にあまり頭に入らなかった。ただラストがあまりスッキリしないところと妙な胸糞悪さが京極夏彦らしいっちゃらしいなとは思った。

 

永遠の0 (講談社文庫)

永遠の0 (講談社文庫)

 

こちらも百田尚樹シリーズの本はあまり読んでこなかったため初の百田尚樹である。いや会社の上司に海賊と呼ばれた男を勧められそちらも読んだことはあるから2冊目か。

作者と作品は常々どれだけ作者の人間性は底辺下劣なものであったとしても作品は別に考えなければならない。ずっとそれが持論であったがTwitterでの発言やそこまで言って委員会における発言、またやしきたかじんの遺族とトラブルを起こしているところを見て人として嫌いになってしまいこの人に限り作品にかなりの色眼鏡を付けて読むようになってしまった。また百田尚樹は実際に見たことがある数少ない有名人のひとりでもある。いつかというとかつてベストドレッサー賞に知り合いからチケットをもらったため見学に行ったことがある。ベストドレッサー賞といえばその年で一番のおしゃれな人が集う賞として有名だ。その中でお目当ての人物が1人いた。そう堀北真希だ。

今はもう人妻となってしまったが実は高校生くらいの時好きであった。まさか憧れの堀北真希と会えるとはと屋内はカメラ撮影が禁止であったが、こっそり撮ってやろうと思っていた。周りのガードがいないときよしと思って携帯のIphoneを向けたところ、何とこの百田尚樹のハゲ頭が邪魔で撮影ができなかったのだ。しかもやたらとこのハゲのスピーチが長い。結局僕の携帯の中には百田尚樹のハゲ頭からかすかに見える堀北真希しか撮ることができなかった。そうこのような出来事があって以来例え百田尚樹がどれだけ素晴らしい作品を作っていたとしてもやはり評価はできないのだ。

余談が長くなったが内容としては主人公の大学生と姉がいてかつて特攻隊だった祖父がどのような人物だったかを訪ねて戦中に生きていた人にインタビュー形式でストーリーをすすめるものだった。かつて批判されていた戦争賛美というものではないがあまり面白みがなかった。ただこちらも上下で2冊あったから割と時間を潰せたのを覚えている。またちょうど留置所にいる中で終戦記念日を迎えたため新聞が戦後70年と言った内容の記事ばかりだったからタイムリーな本ではあった。

アマルフィ

アマルフィ

 

 アマルフィ。留置所にある本は警察官か留置所にいた人が寄贈したものが多いと聞くが何故これがあったのだろうか。真保裕一ホワイトアウトと奪取を読んでおり両作とも非常に面白かったが今回のアマルフィに関してはあまり面白いとは感じなかった。舞台はイタリアローマを中心に、とある日本人外交官の活躍を描くサスペンスなのだが読んでいてもいまいち感情移入できずそういえばイタリアとかローマとか行ったことがなかったなと一人留置所の檻の中で思っていた。映像で見れば面白いのかもしれないが、事件は各国で行われるためあちこちの国をまたいでいくという外交官という特権を何か勘違いしてるのではないかと思わせてしまいどうも読んでいてあまりハマれなかった。

 

純平、考え直せ

純平、考え直せ

 

こちらも他にこの作者だと有名なものあるのになぜこれが置いてあるんだという小説の一つ。奥田英朗空中ブランコなどは面白かったが何故かこれはあまり楽しめなかった。六明会傘下にある早田組の組員である坂本純平。21歳の彼がヤクザとして、新宿・歌舞伎町を駆け抜ける様を描いた物語なのだが、目新しいものが特になくかといって青春小説なのかと思えばそうでもなく、主人公もよく分からないままストーリーを駆け抜けていく。途中で主人公の知り合いの女が掲示板で相談しようよと言って2chのようなものにスレ立てをするがそれが否定的な内容が多く主人公のじゅんぺいが怒りを覚えるシーンもあるがやはり小説の中に2chと言った匿名掲示板を入れるのはあまり作品としてよくないのではないだろうかと勝手に心の中で論評をしていた。ラストもすかっとするものでもなく、実は面倒を見ているつもりの兄貴分が主人公を鉄砲玉にしようと企ててるだけじゃないかと主人公に疑問が残るという放り捨てるようなところが読んでいてあまりいい気持ちがしないなと読んでいて思った。

 

オレたちバブル入行組 (文春文庫)

オレたちバブル入行組 (文春文庫)

 

半沢直樹でお馴染み倍返しシリーズである。こちらも評判は高いのは知っていたがドラマを見ることがあまりないため見ていなかった。原作ではそれほど倍返しのフレーズを使っていないなと思って読んでいたが銀行で(おそらく作者が入っていた頃の時代)の細かい話などが出ていて組織物小説としては楽しんで読むことができた。こちらはシリーズ化していて数冊読むことが出来たため割とすぐに読み切ってしまったのを覚えている。

GTO(1) (講談社コミックス)

GTO(1) (講談社コミックス)

 

 留置所には漫画があるから「お、漫画あるからこれ読もう」とうかつに手を出してはいけない。何故か。1日に持ち込まれる本というのは制限があり(3冊のみ)読み終わっても新しいの読ませてとはならないためひたすら暇になる。置かれてあった漫画はこのGTOシリーズと浦安鉄筋家族だった。両方中学生くらいの頃読んでいたため懐かしいなあと思い読み返していた。読んでいる当時は90年代の学級崩壊や家庭崩壊、何かよく分からない未来への閉塞感というのがあり新しさを感じるが読み直すと「あー昔はこんなことで悩んだりしてたんだな」とやはりどうしても古臭さを感じる。少し話が変わるが留置所に入ると禁煙のためタバコが吸えなくなる。そのためヘビースモーカーは結構なストレスのようだ。朝の運動の時間でも隣の房にいた2人組の兄ちゃん達が漫画を読んでいたらうまそうにタバコ吸うから読んでて吸いたくて仕方ないですよ~と警官と雑談をしていた。T森さんも似たようなことを言っていてよくGTOを読んでいたから「鬼塚がタバコ吸ってるの見たら吸いたくなるんですか?」と聞いたら、「いや浦安鉄筋家族っていう漫画の大鉄というタクシーの運ちゃんが吸ってるの見たら吸いたくてたまんなくなるんだよな」と言っていた。ヘビースモーカーの人は留置所に入るときはタバコを吸っている漫画をできるだけ読まないほうがいいのかもしれない。

 

悪人

悪人

 

 今回読んでいた中で一番印象に残った本はこれかもしれない。吉田修一の作品はパレードやランドマークなど読んでいたため3作目となった。映画化していたため知名度はあると思うがやはりこちらも原作で読んだほうがいいと思う。作中で人を殺したぶっきらぼうであまり言葉を話さない祐一というキャラがいるが、祐一は自分を捨てた母親に対して、金をせびる描写が出てくる。 
自分を捨てた母親が「負い目」を抱いている事を感じ取って、母親の負い目を軽減させる為に、本当は欲しくもないお金をわざわざ母親にせびるという行為をする祐一の気の使い方。 これで母親は「負い目」よりも、母親に祐一に対する幾ばくかの「嫌悪感」を持たせることによって、「負い目」を忘れさせてあげることができた。文学的でもあり悪とは何かということについて考えさせることができた。自分が捕まったのもあるからだろうか、最後捕まるところでの情景描写など妙に共感ができた。殺された遺族の気持ち、また被害者が出会い系を使用していたため遺族へ匿名の人が中傷をするところなど事件に至るまでの話というより、事件から物語がスタートするというところにリアリティがあったと思った。

有斐閣判例六法 平成28年版

有斐閣判例六法 平成28年版

 

 少し変わりどころで六法があった。どうやら六法はなぜか1日に持ち込める本に該当しないらしくこの他に3冊ほど持ち込めると後ほど知って後悔した。学部が法学部だったこともあり久しぶりに六法を読みなおすかと思ったが読んで数ページでギブアップした。読んでいて全く面白みのない条文だけがひたすら並ぶ無味乾燥とした文章は苦手だということが改めて分かった。つくづくこの業界に進まなくてよかったとは思った。

 

出るまでの間、短期間で結構な数の本を読めたと思う。本を読んでいて思ったのはやはり自分は本を読むことが好きだったということだ。なぜ好きなのかと聞かれて昔は暇つぶしだと答えていたが、今は違う理由で好きになれた気がする。話が少し変わるが西村賢太という作家が僕は好きだ。彼のアウトローな生き方、私小説などが読んでいて面白いと思っていた。だがもし留置所の中で彼の本を読んでいたらもっと彼の作品が好きになっていたかもしれない。どういうことかというと彼の作品の中で人を殴り留置所に何日間かいるシーンなどがいるが彼は特に反省などしていないし、殴った相手の方が悪かったと考えている。傍から見たら反省をしていないやつだなと思うかもしれない。だがこういう風に捕まった身からすると彼の考えることが共感が出来るのだ。特に今回みたいに逮捕されて分かる気持ちというのも出てくる。

後にも現れるが闇金をしていただけで捕まったおっさんがいた。そのおっさんは別に金の回収をする際に暴力など使ってはいないが、捕まったそうだ。今の法律では闇金という職業をするだけで違法らしい。そのおっさんには子供がいてしばらく刑務所に行くから会えないだろうなという話を聞いて罪とは何か。悪とは何かということを考えた。

悪いことをする方が悪いという言葉は確かに最もだろう。宗教だろうが法律だろうがルールを破ったものには制裁がある。罪には当然罰という報いが来る。だがそれを受ける側となっては在り来りな言葉だけでは改心しないだろう。お前は悪いことをしたからダメだ。そう突き放すだけでなく理解してくれるという人も周りにいなければその人はずっと孤独のままなのだ。

罰を受け入れる人間にとって拠り所になるものはそう言った世間一般的なモラルや宗教そんなものではなく、同じ境遇に出会いそれに対して迷ったり悩んだり誰かを憎んだりと、時にはそれをユーモラスに書いたりするような作品かもしれない。いや違うかもしれないが僕は文学というものはそれに当たるのではないかと考えた。この時一番読みたかった本はドストエフスキー罪と罰であった。おそらく部屋で何もない状態で読むよりも留置所で読んだほうが深く共感できただろう。そして心の支えになったかもしれない。留置所から出てだいぶ経つがいつか読んでみたいと考えている。

 

 

家族との面会

前回のあらすじ

3日目の地裁で保釈されることが失敗してしまいどうすれば良いんだと絶望に陥っていた僕。そんな僕の前に国選弁護人と出会い一緒に事件を解決して早く外に出ましょうと励まされるも母親に児童ポルノ書類送検されたことを話されてしまい、踏んだり蹴ったりな状態に。この先どうなってしまうのだろうか。

 

3日目弁護士が面会に来てくれた後留置所の中はもう真っ暗だった。この日も2日目に比べるとそこまで疲れていなかったが早めに寝ることにした。国選弁護人から初めて外の情報を聞いてしまい僕がこうやって捕まっている間にも色々と周りが動いているを知りつつも何もできない現状を改めて再認識してしまった。

「起床~~」

もはやモーニングコールとなっている警察の朝の挨拶だ。だいぶ慣れてきたとは言えやはり朝が早いのは辛い。半分寝ぼけ眼で布団から抜け出る。いつも通りの点呼が終わり布団の片付け、朝の清掃が終わったあと留置所内に爆音が鳴り響き朝飯の弁当がやってくる。この留置所から釈放されるまで有線だったからか基本的にJPOPばかりだったのを覚えている。

留置所の1日の流れだが2日目や3日目のように地検や地裁に行く必要がなければ飯の時間以外ほとんどすることがない。各警察署によって微妙に違うところもあるだろうが概ね1日のタイムテーブルは以下のとおりだ。

6:30 起床

~7:00 布団の片付け、洗面

7:00 朝食、部屋の清掃

8:00 運動(平日のみ)*運動といっても、髭剃りや爪切りのみ

入浴(夏場は週に2回)

9:20 本日の本選び(1日3冊まで。)

以降、昼飯まで読書など自由時間。

12:00 昼食

以降、夕食まではまた、読書などの自由時間。

17:00 夕食

20:20 本回収、洗面、就寝準備

21:00 消灯

といった規則正しい生活を送る必要がある。罪を否認していたらこの中に刑事の取り調べがあるそうなのだが僕はさっさと罪を認めたため取り調べも特になくとにかく暇だった。何しろすることがないのである。最初は房の中で転がったりしていたがいつしかすることがなくなり横になっていた。そんな中唯一時間を潰すのにもってこいな出来事がある。

閉鎖された空間で外部の人間と出会う時間。そう面会である。

T森さんと話ししていたときT森さんはここを出所したら自分は横浜か大阪に行く予定だと話ししていた。「何故ですか?」と聞いたところ横浜は知り合いが介護の仕事を紹介してくれるらしくもし実刑を打たれなければそこで働くつもりがある。ただ実刑をくらうと流れるだろうからここでの生活は辞めて誰も知り合いのいない関西にでも行って働きたいとのことだった。

「こっちに知り合いとかいるでしょうに。何でまた誰も知らない場所に行くんです?」と聞いたら色々と自分はここで人の世話をしたりしたことがあるのに、捕まってから誰も面会に来ねえ。こんな不義理なやつらとは思わなかった。むしろこっちから縁を切ってやるよとやや怒り気味に話してきた。

留置所に入ると上でも書いたように基本的に暇である。房の中にいるときは横になっているか本を読むことくらいしか出来ない。テレビも拘置所とかじゃないから見ることが出来ず人と話すことに飢えるのだ。同じ房にも人はいるが他人の上に何日も同じ空間にいると話すことがなくなってしまう。そのためもしも知り合いが捕まったと知らせが入ったら(おそらく弁護士から連絡が来ると思うが)是非とも面会に来てあげて欲しい。

T森さんではないが日頃お世話になったりしたのに面会に来ないとなるとそれはもう縁を切るくらい憎まれてしまうだろう。逆に面会(持ってくるものは何でもいいジャンプだろうが漫画だろうがただ飲食物は禁止のようだ)に来てくれたらあなたのことを命の恩人とは言わないが一生覚えてくれるだろう。ちなみにT森さんと話したところ房の中にいる人に色々教えても外の世界に出たら思い出したくないからかもう面会に来ることはないそうだ。(事実僕も捕まって2年が経つが誰の面会にも行ってない)

それくらい房の中にいるのは不安でもあるし暇でもあるのだ。孤独には慣れていると思っていたが、実際孤独を強いられる環境だとあっさり弱音を吐くような弱さに気づいてしまった。

「18番面会だ。お父さんが来ているぞ」

房で寝転がっている僕に警官が声をかけてきた。捕まった日はお盆前とは言え平日だったがわざわざ来てくれたそうだ。房から出る準備をして面会室に入った。面会室はよくテレビのドラマに出ているような丸い窓越しに会話をする感じだった。

 

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(パイプ椅子に座って面会に来た人と話す。後ろに警官が立って見ていた)

父と久しぶりに会った。昔は厳しかったが、こっちが働きだしてからは心境の変化があったのか、母と別居したのが原因なのかやたら優しくなっていた。面会したこの日も「お前お盆なのに何やってるんだ」と苦笑いされたのを覚えている。そういえば中にいたら日時感覚を忘れてしまうがお盆であった。護送車に乗っているとき皇居の近くにデモの声がうるさいなと思っていたが終戦記念日を留置所の中で迎えることになってしまっていた。

実は正直この時期待していたことがあった。父親と母親は今は別居中なのだ。なので今回僕が逮捕されたことにより面会する機会があり家族で久しぶりに顔を合わせるきっかけとならないのだろうかと勝手に思っていたが、実際はたまたま同じ日に上京してきたが父親と母親は時間をずらして面会することになったそうだ。少々当てが外れたが、父親とまず会うことになった。父は弟をつれて東京まで来てくれたらしい。

「ただまあ元気そうで良かったわ」そう言って父は弁護士から聞いた内容を僕に伝え、会社はどうなるか分からないそうだと話した。後差し入れしようとしたが飲食は禁止らしいので金を少し都合すると言ってくれた。この金は警官が預かり何か用のあるときに使ってもらうシステムだそうだが現金をほとんど持っていない状態で入ったためありがたかった。

あと、弟が来ており差し入れで本を数冊貰ったが内容があまり面白いものではないのと、文庫本であったため恐らくすぐに読み終えるなと思ったため「せっかくだから資格の本とか差し入れしてくれないかな?」と言うとさすがに「お前何でここに入ったかよく考えろよ」と父が少し怒った。もっともな話だろう。父とはあまり話すことがなかったため面会の時間は15分くらいで終わった。面会が終わると警察官が房に連れ戻すのだが「優しそうなお父さんじゃないか。きっと心配してると思うよ」と話してきた。ああ見えて昔は短気でよく殴ってきたんですよと言おうかなと思ったけど、面倒だったから「そうですね」と生返事をしたのを覚えている。

 

時間をずらして今度は母親が来た。この時少し予想外だったのは母が知人の女性も連れてきたのだった。てっきり母親だけが来るものだと思い込んでいたためびっくりした。その際自分が上下灰色のいかにも捕まった時の容疑者が着てますよというスエットを着ていた。よく逮捕された際に容疑者が護送されている写真を見るだろうがあれは他に服を持っていないnotお洒落さんというわけではなく、警察署が所有しているものなのだ。最初はダサいから嫌だなあと思っていたが留置所に入る際にパジャマを持ってこれる用意周到な人物は中々いないため自然と皆灰色のスエットを着始めるのだ。

さすがにいかにも捕まってますよという服はダサいなあと思い警官に「すいません。着替えってできないですか?」と聞いたところ「ダメだ」とにべもなく断られた。着替えは朝と夜の寝る前しか許されていないらしい。少し無理やり頼んでも拒否されてしまい「いやーこんな格好で面会するの恥ずかしいですよ」と警官に軽く愚痴ったら

おめーよ捕まっといて恥ずかしいとか馬鹿じゃねえの?捕まってることのほうがよっぽど恥ずかしいだろ!

とT森さんに盛大にツッコミを入れられた。まあ確かに捕まっといて恥ずかしいも糞もないよなと思いスエットに手錠をつけたTHE・犯罪者という格好で母と知人に会った。当たり前だが母親には泣かれた。知人も泣きはしなかったが「何してんの」と言った感じで話してきたのを覚えている。この知人とは疎遠になったが家族以外で来てくれた唯一の知り合いだったので今でも申し訳なさが残っている。

この時話したのは主に会社のことだった。どうやら母親にも会社の営業から電話があったらしくどういうことか事情を説明して欲しいと連絡があったそうだ。またその際国選弁護人の先生に母親が会社の営業の電話番号を教えたため、弁護士の先生がかけたところ勝手に情報を教えてもらってかけるのはプライバシー違反だと怒られたそうだ。うちの気の強そうな営業の顔を思い出して、知らないあいだにトラブルが増えてきているなと思い頭を抱えたのを覚えている。この時は父の時と違って面会の時間いっぱいまで話をした。終わったあと警察官からまた「あまり親御さん心配させなさんな」と言われた。留置所の警官は課が違うからだろうか、基本的におせっかいな人が多かったのを覚えている。

 

房に戻るとT森さんが珍しく手紙を書こうとしていたのか便箋を取り出していた。「家族さんにでも送るんですか」と聞いてみた。

「いやー俺あよ結婚してて娘がいるみたいなんだよな。このいるみたいってのは俺自身はっきり見たわけじゃなくて昔失踪したことがあるんだよ。家族捨てて。捨てた理由ってのもまあ大したことじゃないんだけどよ(嫁が浮気していたからだと後ほど聞いた)弁護士の先生に調べてもらったんだよ。その気はなかったんだけど、するとさあもう娘が結構いい年になっててそれで手紙送ろうと思ったんだけど何て書けばいいか分かんなくてさ。今まで全然父親らしいことしてこれなかったのに今更手紙が着ても向こうも困るだけだしなあと思うとな~んも書く事がないんだよ」

さっきまで家族と面会していて家族のありがたみが分かった僕とは対照的だった。T森さんは父母とも仲が悪く、親が離婚をしていたため義理の父と母に育てられていたらしい。だが義理の父と折り合いが悪いのとヤンチャをしておりわざと親に金がかかるような悪さをしていたら勘当されたそうだ。その後結婚をして娘が出来たそうだがその嫁とも喧嘩をして今はバツイチの独身だそうだ。

話を聞けば聞くほど周りにはいない人種だ。別に文章を書くのは得意と言うほど上手いわけではないが少々お世話になったこともあり代筆しましょうか?と聞いてみた。するとT森さんは少し考えた顔をして「いや良い」と断ってしまった。

留置所に入るとすべての所持品が取り上げられてしまう。まず何が一番困るかというと外への連絡手段がなくなることだ。外への連絡手段がなくなると例えば家賃が溜まっていたりしてもそれを支払えなくなるし、ペットなどを飼っていたとしてもそれに対しての世話が出来なくなる。この際連絡する手段というのが手紙だけになってしまうのだ。これはかなり不便である。

 

今回留置所に入って良くわかったのはせめて実家の住所と連絡先だけは、何があっても空で覚える必要があるということだった。近年携帯が発展したのは好ましい出来事だが、そのせいで住所や電話番号を覚える必要が減ってしまった。長年住んでいた実家などがあれば覚えているかもしれないが、親が引越しをしたりして実家の住所を忘れると連絡できる相手がいなくなってしまう。基本的に親族以外に警察は連絡を入れることをしない。弁護士を介せれば知り合いに自分の現状を知らせることができるそうだが、まず弁護士に依頼をすることから始まるためどうしても遅くなってしまう。

そのためまず逮捕をされたら連絡できる家族の居場所がないと何日間も部屋をあけっぱなしという事態が起きてしまうのだ。逮捕をされるということは一般的にあくまでも容疑者というだけであって罪を犯したか確定していない人物も結構いるのである。なのにこのように逮捕をされ場合によっては20日も拘留されるのはシステムとして非常に不都合なのではないかと思ってしまった。しかも警察はこちらの事情など一切考慮してもらえずどのようにすれば起訴できるかしか考えていない。僕は相手が殴ってきたのが最初とは言え傷害をしたのは事実だがこれで冤罪だとしたらかなりの不利益を被るだろうなというのが分かった。

晩御飯が終わり、面会の時知人と母親が手紙を持ってきてくれたためそれを読むことにした。内容はまあ僕の体調を気遣ってくれているもので改めて他人に迷惑をかけていることが分かった。一応今日面会に来てくれた人のために手紙を書く事にした。

筆不精で家族や知人に出す手紙が留置所からというのも僕らしい気がするが、ゆっくりと時間をかけて何を書くか推敲して書き始めた。留置場で渡されるボールペンは自殺防止のためか凶器に使われることを考えられてか先っちょが2、3ミリしか出ていない非常に書きづらいものだった。ボールペンを垂直に立てながらチマチマと書いていたらいつの間にか就寝の時間になった。現代に生まれたため手紙の体裁やマナーなどほとんど習っていないためあちこち頓珍漢な文章ではあると思うが、とりあえず今日来てくれてありがとうとお礼を書いた。

手紙を出したあと一斉消灯があるため部屋の少しの明かりを残してボッと音を立てて周りの電気が消えた。この日は人と会ったからか妙に人恋しくなって中々寝付けなかったのを覚えている。

 

国選弁護人は有能か無能か

前回のあらすじ

東京地裁に行って裁判官から保釈をもらえるチャンスと思っていたが、裁判官が女で肩に黒色のブラ紐があってそれを見ていたら拘留延長を食らった。

 

記憶がやや曖昧だが東京地裁の待合所みたいなところで保釈(留置所から出れること)が決まった人は数人と数える程しかおらずほとんどがその場を座ったままだった。この後どうなるのかと思っていたら国選弁護人を頼める人について説明があり番号を呼ばれることになった。留置所に入って初めて外部の人と会うことができるのである。

ちなみに国選弁護人は懲役3年以上の刑に処せられる犯罪でしか依頼することができない。しかも国選弁護人に依頼すれば国が補助金を出すからか無料で行動してもらえる。一般的に弁護士に依頼すると着手金30万、成功報酬30万とあるからかなり経済的にお得だ。もしこれが暴行罪だったなら懲役2年程度の刑になるため国選弁護人には依頼できない。なので自費で雇うしかないから傷害罪で良かったと思うかもしれないが、恐らく相手が怪我をしていないただの暴行罪なら逮捕の可能性はかなり低かったと思われるのでお得と言っていい物か分からない。

さて先ほど裁判官に会うために行った通路の逆方向に弁護士がいる部屋があった。救われぬ哀れな子羊たちを救うのは有能な弁護士か無能な弁護士か。皆神妙な顔つきをしていた気がする。何しろ担当する弁護士次第で罪の重さが変わることがあるのだ。残された最後の希望の場所がこの国選弁護人かもしれない。

弁護士とは一般的にロー試験を通過しなければならない。だから本来なら全て優秀なはずなのだが、近年のロースクール成立による弁護士の過剰供給などがあり優秀じゃない弁護士も増えてきたと言われている。また優秀な弁護士は基本的に刑事事件をあまり担当したがらない。そして国選弁護人は優秀じゃない人が多いと一般的に聞く。なぜならば優秀ならば自分で事務所を抱えて客をとっているからだ。

また弁護士は法律の知識だけでなく例えば今回のような傷害のような事件なら相手との交渉力というのが強く求められる。そのため勉強だけしか出来ない弁護士だと不安だなと何となく思っていた。

弁護士がいる部屋も幾つかドアがありその中に国選弁護人がいた。ドアを開けると先ほどの裁判官がいる部屋とは違いアクリル上のガラスのようなもので途切れていた部屋の奥に弁護士が座っていた。後ほど留置所で面会室のようなところに度々行くことになったが、今回の国選弁護人と合った部屋は面会室に似ていた。

さてそこで出会った弁護士はT森さんが言っていた女の弁護士ではなかった。そのため正直少しがっかりしていた。見た目は生真面目そうでメガネをかけておりまだ若かった。ロースクールから出て数年も経っていないだろう。この手の交渉事が必要な事件に人生経験があまりなさそうな若い弁護士で大丈夫なのかと不安になったが、国選弁護人である。無料であるためワガママを言える身分ではない。とにかく僕はこの目の前にいる真面目そうな国選弁護人に全てを委ねるしかなかったのだ。

 「初めまして弁護人の○○と言います。○○さん(僕の名前)の事件について担当させていただきます」

そう言うとすっとガラスの下の少しだけものが入る隙間から名刺を渡された。名刺を見ると事務所の名前とその弁護士の名前が書いてあった。

「まず事件のことを知りたいので正直に話してもらえないでしょうか。内容次第で弁護方針が変わりますので本当のことを話してください」

これは被疑者の権利なのだろうか、普段はずっとそばにいる警察官がこの時だけはいなく話しやすい空間であった。とりあえず僕は駅でトラブルになったこと、先に殴られたため後ほど電車の中で殴ったこと。その時トラブルの相手から先に喧嘩を売られたことなどを話した。

「それならその殴った方と示談を進めていく方針が一番いいですね。後ほかには何か前科や前歴等はありませんでしょうか」

正直ちょっと言いにくかったが、児童ポルノのことを説明した。ネットでブログをやっていたら児童ポルノの画像がひっかかり神奈川県警に取り調べを受けて書類送検されたこと。罰金等の前科はないことを説明した。

「じゃあ特に今回の件と似たような前歴はないわけですね。分かりました。○○さんは会社勤めですよね。なるだけ早めに解決できるよう尽力します」

そう僕は会社に勤めている。正直この段階で3日目だったがクビになるか初めてこの時考えさせられたわけだ。家に連絡は行っているのかとか様々な悩みがぐるぐる回り始めた頃外の警官がドアを叩き「時間です」と僕を外に連れて行くことになった。

時間的には5分程度だろうか割とすぐに出たのを覚えている。見たところ国選弁護人がいる部屋は3つほどだった。そこに100人近い捕まっている人が相談に来るわけだから流れ作業になるのも仕方ないかもしれない。僕はもらった弁護士の名刺をお守りのように持っていたのを覚えている。

裁判所で待っているあいだに事件関係なのか分からないけど書類を大事そうに持っていた 若いお兄ちゃんの気持ちが少し分かった気がした。一度捕まると自分の所持品はかなり制限される。きっとあの書類の中にも弁護士の名刺だったり色々入っていたのだろう。

さて僕以外にも国選弁護人と話した被疑者達が戻ってきて帰ることになった。帰りの護送車に乗りまたいくつかの警察署を回って自分が捕まった警察署に戻った。すると護送車の中に19番の彼が残っていた。どうやら釈放されなかったらしい。留置所に入る前に身体検査をする必要があり小部屋に通されるのだが、そこに入ってからはだいぶ監視が緩くなるから少し世間話をすることにした。

「釈放されなかったんだ?」いきなりタメ語で話しても大丈夫かなと思ったけど特に気にされずに返事をくれた。

「ええ、まあ」

「いやーずっと座っていたから疲れたよね」そう言うと笑顔で「いやーもうクタクタです」と好意的に返してくれたので彼が何で捕まったのか聞いてみることにした。

「そういや何の罪で捕まったの?」そう聞くとニヤリと笑いながらこう言われた「恐喝です」やはり捕まるだけあるのだろう。見た目フットサルとかが趣味にしか見えない茶髪のお兄ちゃんでも何かしらの犯罪をしているわけだ。

その後すぐに警察がやってきて自分の房に戻った。今日はチコリータと騒いでいた兄ちゃんはタオルを顔に置いて横になっていた。

T森さんはやっぱり戻ってきたかという顔で僕を見ていて少し地裁のことを話して裁判官が女だったことを話したら「ふーん」と薄い反応をされたのを覚えている。

夕食が終わってそろそろ就寝の時間になったから寝る前の準備をしようかと思っていたとき「18番弁護士の先生が来たぞ」と留置課の警官が来た。

さっきの国選の弁護士の先生がもう来てくれたのか仕事できるなあと思って行ったら違う弁護士の先生だった。その先生は昔法律の無料相談に乗ってもらったとき名刺をくれたから財布に入れていたのだが、留置所に入る前にたまたまそれを見つけこの先生を呼んでくださいと頼んだのだった。

「いやー○○さんこんなところで見たくなかったですよ」

ずいぶん前に相談したけど僕の顔を覚えていたからか笑顔で話された。僕も久しぶりに会えて懐かしさがあった。この先生(I先生と仮名)は法テラスで相談したとき以来だったが交渉事に強そうな雰囲気だったのを覚えている。事件の内容を説明すると「示談にするしかないですね」と皆と同じことを言った。

「私ならすぐにまとめれる自信ありますよ」そうI先生は言った。頼もしい一言だ。だけどと前置きをしてこういった「私に依頼するなら着手金が20万円、そして成功報酬、示談の代金をいただく必要があるんですよ」前回は法テラスで相談したため着手金が必要なかったが、今回は正式な依頼ということになる。I先生が掲示した金額はぱっと僕には出せないものだった。とりあえず国選弁護人にも頼んだので考えを保留させてくださいと言った。

僕が房に戻るとT森さんから「お前私選頼んだの?」と聞かれた。ちょっと金額的な問題があるので迷ってます。と言うと「やっぱり私選の方がいいよ。だけどあいつら高いんだよな」そう寝転びながら言ってきた。

「T森さんは私選なんですか?」そう聞くと「いや俺も金ないから国選だけどあいつらほかにも依頼人多いからかあまり来ないんだよな」と言われた。やっぱり私選の方が良かったのだろうかそう思い寝ようと思ったら「18番国選の先生が来ているぞ」と警官が来た。

時間は夜の12時頃だろうかどうやら弁護士はいつでも面会に来ることができるらしい。

「お待たせしました。まずは弁護方針についてですがとりあえずお母さんとは連絡がつきました」

思ったより仕事が早いじゃないかと僕はこの国選の弁護士(以下K先生と呼ぶ)を見直した。K先生はほかにもこのような形で留置所に向かっていたのだろうか、整っていた髪型が汗でぺったりとくっついていた。だが喜んだ状況と裏腹に言われた言葉は必ずしも好ましいことではなかった。

「まず状況ですが、あまりよくありません。会社にはあなたが捕まったことがバレてしまったそうです」

第一声がそれだった。どうやら勤務先に僕が逮捕されたことはもう伝わったそうだ。正直逮捕をされた日から数日はたまたま休暇を取っていたため会社に伝わらないでくれと願っていたがそうは上手くいかなかった。

「会社の方とは明日こちらから連絡を取らせていただきます。急に○○さんが来なくなってパニックになっているそうです」

どうやら現状は母と連絡が取れたことと会社に僕が捕まったことがバレたらしい。被害者への接触はまだだそうだ。好ましくない現状を話されてどう返していいものか困っていたところにさらに追い討ちをかけるようにこう言われた。

すいません。これも言い忘れていましたがあなたのお母さんに児童ポルノで捕まったことを言ってしまいました

「はあ?」

「お母さんと話ししたとき以前トラブルになったということをお母さんが言っていたのでそれを児童ポルノの件と勘違いして児童ポルノのことですよね?と言ったらお母さんはどうやら知らなかったらしくちょっと齟齬が生まれてしまいました」

こちらの伝達ミスもあったがまさかこう軽々と人の個人情報を親に言うとは思わなかった。

無能。

心の中でとある弁護士の顔が思い出された。

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(画像は無能 弁護士で検索したもので特定の団体、人物、職業の誹謗中傷の意図はなく、また過度の礼賛をしたり神格をする意図もありません)

この弁護士で大丈夫なのだろうか。留置所に居を構えてから4日目を迎えたが暗雲が立ち込めてきた気がした。